2000年4月から、新たに始まった介護保険制度。
これは医療保険とは異なり、営利企業を含む多様な業種・業者からのサービス提供を認めています。
くしくも同じ年の8月、私の目指す医療を具現化すべく、MAクリニックが産声を上げています。

さて、この介護と医療。
同じ社会インフラであっても、拠って立つべき法に明記されてある通り、決定的な違いがあります。
それは、介護サービスは医療サービスとは異なり「商売」であること、すなわち利益追求をして良いことになっています。

私は、社会に出てから長年、「非営利」という医療という分野で、働いてきました。
これは逆説的に言えば、医療という専門分野さえ磨いていれば、経営努力はしなくても、ある程度の生活の保障はされている特異な業種、言わば社会に守られた業種とも言えます。

国家が、少子高齢化をなんとか乗り切ろうと模索している今、この時期に医師という職能を与えられた者の「社会的使命」とはいえ、介護サービスという荒波に新たに参入する、他の同業他社と伍していくには、それなりの勇気と覚悟は必要です。

名は体を現わす。
常に、自身・職員・地域に向かって発信、鼓舞し続けるスピリッツは大切です。
私の思い描いている介護ビジネスを、明確に「ひと言」で表わす理念・ビジョンは必要と言うより必然でして、それを端的に現す言葉が「正直家」です。

商売の血筋に育ったわけでもなく、商いのイロハもわからない新参者が、自らの思いのみで新たな分野に足を踏み入れるとき、成功して来た先達に思いを馳せることは、今後の羅針盤として大いに役に立ちます。

何ごとも原点に立ち返ることは必要です。
そもそも商売とは何なのか?
日本の風土・文化に根差した「商売繁盛」のコツは?
私は、そのヒントを、近江商人にもとめました。

売り手良し、買い手良し、世間良しの「三方良し」。
そのバックボーンは、正直・誠実であること。
もってお客さまの信用・信頼を得ることです。

これって、私のような一般人には「言うは易し、行なうは難し」です。
壁にぶち当たったとき、常に振り返ることが出来るよう、肝に銘じておけるよう、自戒を込めて付けた屋号です。

正直家は、背伸びをして、過剰な設備・サービスを謳うのではなく、等身大の施設とケアを提供することにより、「三方良し」の理念の下、日々職員と共に、研鑽を続けてまいります。

正直家管理者 谷崎俊哉 職員一同
平成27年11月(正直家:開設5周年を機に)